ケアコンサルタント 川上由里子公式ブログ

ベネッセスタイルケア様に取材いただいた原稿が完成し、先日冊子「アリアStyle」が私の手元に届きました。

アリアStyle

明るくやわらかなイメージの冊子です。
笑顔が溢れています。

特集「これからの住まい方を考える」。
多様化した高齢期の暮らし方、どのように住まい、住まい方を考えればよいのか、とても難しいことではありますが、私のケアや顧客相談等の経験からポイントとなる点をお伝えさせていただきました。

高齢者住宅選びは、入居時の心身の状態などステージにより顧客のニーズは大きく異なりますが、まだ介護が必要なステージ前でご入居を検討される方は、“お世話をしてもらう”という意識ではなく、人との関わりによって刺激を受け、自分の役割、生きがいや楽しみを見つけられる場所であってほしいと私は願っています。
何か与えてもらえることが幸せではない、ということが見えてきた社会ではないでしょうか。

そのためには、職員側の意識改革も大切になってきます。
介護は重要ですが、介護一色にしてしまっては能力を奪ってしまいます。
支える人支えられる人のあり方が問われています。

アリアStyle

大きな写真にびっくり仰天です。(汗)
大変わかりやすくおまとめいただきました。

取材後、ベネッセスタイルケア様が運営する「アリア松濤」にもお邪魔させていただきました。
東京都渋谷区の閑静な住宅街に立つモダンな高齢者住宅。
この日はダンスパーティーの練習、お洒落な装いをした方々が集まってきます。
「昔のようには踊れない」と仰いながら、音楽がかかると今できる範囲で上手にワルツのステップを踏んでいる様子に思わず拍手してしまいました。
スタッフのさり気ない見守りや工夫にはプロの意識を感じます。
高齢期だからこそ、楽しみを見つけることを諦めずに続けたいですね。

資産のある方、無い方、都心に暮らす方、郊外に暮らす方、ひとり暮らしの方、家族でお住まいの方、それぞれに新しい時代の住まい方へのチャレンジが始まっています。
自宅を自分流にシンプルにリフォームする、高齢者向けの集合住宅で共助の暮らし、団地での多世代がつながり支え合う暮らしなど、皆さんは齢を重ねた時、どこでどんな風に暮らしたいですか?

私はやっぱりどこにいても自分の役割を持ち続けていたい。
痛みを感じている人が隣にいたら気がついて声をかけ合いたい。
自分が痛みを感じたら頑張ることも大切ですが、そっと話す勇気を持ちたい。
そのために今をこつこつ頑張り続けたいものです。

そんな想いを持つ人それぞれの暮らしの器となる住まい、住まい方を大切にしていきたいですね。

ベネッセスタイルケアのご担当者様、さまざまな学びをいただきました。
ありがとうございました。

認知症のこと、自分ごととして

カテゴリー: 活動報告

大学病院や県立総合病院、人工透析クリニックなどの医療現場や高齢者住宅で、ナースとして13年ほど勤務していた私が、「医療に限定せず一般社会の実態を知り、人の人生を学び、自分ができる人生でありたい」と飛び出したのは35歳の頃の話でした。とても勇気がいりました。 

当時の私は、専門職としてのキャリアをコツコツ積み重ねながらも、“認知症”に関する実態を知りませんでした。
医療機関では生命に関わる治療が優先するため、認知症の人の症状は薬でおさえ治療する場面が多く、また、認知症の症状の強い方は認知症の専門疾患病院に入院していた為、私が出逢うこともなかったのです。
「年寄りだから仕方ない」「早く退院してもらいましょう」
私の周囲の医療関係者でも、認知症の人を正確に理解している人はいないに等しい状態でした。

私は様々な施設や病院、在宅、介護の現場、そして「認知症の人を支える家族の会」にも参加し、自分の時間を使いながらボランティアとして活動し実態を目の当たりにしたのですが…。
その時の衝撃的な驚きと憤りが今の私につながることとなりました。
認知症の人たちの生活は、人間らしさを奪われた管理中心の生活の中にありました。
私は施設の職員に尋ねました。何故なんですか?と。
頭の中には疑問と怒りと、そして悲しみでした。

経済大国日本の豊かさとはなんだろう。認知症とはどういう疾患で、認知症の人とは?
これでいいのだろうか。きっと違う。私ができることはなんだろうか。今、何かをしなくてはならない。私のひとつのテーマとして働きながらも認知症について学び続けました。

そんな時、偶然、公的銀行様から「職員に対して認知症に関するセミナーを行っていただけませんか?」というご相談をいただきました。それが今セミナー講師をしている始まりです。

上からの富士山

前置きは長くなりましたが、先日、猛暑の中、福岡に向かいました。
3年前から開始した、UR都市機構の職員に向けた「認知症サポーター養成講座」のためです。
九州支社の講座で受講者が1,000人を超え、私にとっては感激の一日でした。
いつまでもいきいきと暮らし続けるまちづくり、住まいづくりに日々懸命に向かっているURグループ職員にとっても、その先にいるのは、生活している人です。
人への関心や理解があるか否か、認知症についての正しい理解の有無は、今後ますます大きな違いとなって現れることでしょう。

現在、74万戸の団地の中では、団地の集会場での支えあいの認知症カフェ、地域包括支援センターと連携し、住民向けの認知症サポーター養成講座、近隣の大学の学生や自治会と連携し徘徊模擬訓練と、様々な取り組みが行われはじめています。
ケアの職種だけではなく、様々な職種の人に知っていてほしい大切なこと。
UR職員1人ひとりの創意工夫が地域に繋がり、社会に広がってきています。
→ UR都市機構:URの認知症サポーターが1000人に

働く人の仕事と介護の両立を支える。企業の人事部様などからのご依頼でも、認知症に関するセミナーのご依頼が増えています。
働きながら介護する人にとって、家族の認知症の問題はなかなか相談に至らず顕在化しにくいものです。
近年は様々な情報が溢れているため、それゆえに、自分流に走ってしまっている方もいます。

先日は、某企業内相談室様主催の介護セミナーにて、都内と神奈川県内、業務終了後の夕刻から職員の皆様にお集まりいただきました。
日々の介護相談の中でお困りの方がとても多いことから、認知症をテーマにとご提案させていただいたのですが、参加希望者は定員を大幅に上回り、長時間にも関わらず皆様には熱心にご清聴いただきました。

セミナー会場

他の企業様と同様に、アンケートの記述もとても多く、一言ひとことに学び励まされます。
「もっと早く知っていればよかった」という声が少しずつでも減りますように。
今苦しんでいるご本人、ご家族の悲しみが少しでも減りますように。
伝え続けたいと思います。

セミナー資料

触れる、嗅ぐ、聴く、感じる。
私自身が大切にした五感を大切にしたケアもお伝えさせていただきました。
主催者の皆様、受講してくださった皆様、心よりありがとうございました。

人に伝えるためには私自身にもフレッシュな情報の学びと新鮮な思いが大切です。
様々な分野のセミナーに積極的に足を運び学んでいます。
9月には、「認知症の人を支える家族の会」副代表理事の杉山孝博先生のセミナーを聴講予定です。杉山先生のセミナー聴講は3回目になりますが、心やさしい先生にお逢いできることも楽しみにしています。

病気や障害、認知症、貧困、離別や喪失、生きていると人はさまざまな苦しみに遭遇しますが、明るく予防し、そしてその状態になった時には、できなくなったことを追うのではなく、できることを大切にしながら歩き続けたいですね。
私の生涯の心の応援歌です。

UR都市機構 社内報「まちルネ」2018・9月号に掲載