ケアコンサルタント 川上由里子公式ブログ

断捨離にて思うこと

カテゴリー: 日常

猛暑の夏が過ぎ去り、ようやく秋へと季節が移り変わっています。
今年は例年とは異なり、暑かったり寒かったりとなんだかおかしいですね。
それでも、美しい月夜、手元に届いた新米、銀杏と、しっかり秋はやってきます。

私は夏から秋にかけて大きな断捨離を実施し、本500冊を手放しました。
いつかゆりこばあさんになりゆっくりとした時間ができた時、私の知的好奇心を育て、時に励まし時に癒してくれた愛読書を読むことを楽しみにしていましたが、本は重くスペースを取ります。
よって思い切って断捨離することにしました。(断捨離を迫られました)
残すもの、残さないもの、本当に必要なものとそうではないものを選択しました。

本500冊が私の部屋から消え去った晩、寂しいけれどスッキリとした身軽感もありました。
はて、これまで私が最も影響を受けた本ってなんだったのだろうかとお布団の中で考えました。
う〜ん これは結構難しい。そしてハッと思い当たりました。

それは、20代前半に読んで衝撃を受けた精神科医のヴィクトール・E・フランクル(1905〜1977)の「夜と霧」という書籍で、心理学者であるフランクルがアウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所に捕えられ、その過酷な体験を記録した本です。
まだ人間の醜さや社会の暗さを知らない私でしたが、人間とは何かという問いをまざまざと突きつけられたのでした。
一人暮らしの私は、その本の存在がとても怖かったことを今でも覚えています。
でも、そのフランクルが生き延びながら残してくれた1冊の本からは、残虐さの中に希望があり、私に生きる意味や志をも考えさせてくれたのです。

収容所の過酷な生活に耐え、希望を持つことで生き延びたフランクルは、解放された時、その希望であった妻、両親、兄妹、多くの家族を失ったことを知り最大の危機を迎えました。
それでも、彼はその後、精神療法医として生き続け独自の「ロゴセラピー」を展開し、どんな人生にもどんな辛い体験にも意味があることを伝え続けてくれました。

つまり、詩や物語、絵本が大好きな私ですが、自分がこれまで最も影響を与えた本は、癒される本ではなく暗く怖い印象を与えた静かな書だったことに断捨離を行い気づかされたのです。
人間の残酷さを知った衝撃と、強制収容に耐えながら命をかけて書き下ろした著者の存在が、まだ青い私の全身に響いたのではないかと思います。

さて、私はそんなに大切な本を、なんとうっかり処分してしまったことに気がつき大慌て。
残された本達を確認すると、やっぱりない!(泣)
直ぐに慌てて調べなんと再度購入しました。断捨離中のドジ話です。
購入した本は新版ですが、まあそれでも良いでしょう。
私にとっては手元に置いておきたい大切な1冊です。
フランクルの生き様、人間を思う優しさから学び、私も私なりに人間に向き合う人、困難に向き合う人であり続けたいと思います。

私はこれまでカール・ロジャースの来談者中心療法を学び活かしてきましたが、いつの日かロゴセラピー(logotherapy)をじっくりと学び役立てたいと思うのです。
「ロゴ」とはギリシャ語で「意味」の意、人が自己の存在の意味を見出し、自己の価値の可能性を信じ、自分の人生の責任制を自覚することを援助する治療技法です。

皆さんは本が好きですか?本を持たない人は音楽でも良いですね。
皆さんのライブラリーで自分に最も影響を与えた本は何でしょうか?
最も影響を与えた音楽は何でしょうか?そしてその理由は?
持っているものから自分を知ることができます。
深まりゆく秋に温かい飲みものを飲みながらそんなことを考える時間があっても良いかもしれませんね。

これまで私に影響を与えてくれた本との出逢い、人とのご縁、住み慣れた街に感謝します。