今日はスペインのチェリスト、パブロ・カザルスの演奏するカタロニアの民謡「鳥の歌」を聴きながら祈りを捧げました。
7月18日の朝、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生が永眠されました。
105歳の最期まで、現役のお医者さんとしてご活躍された日野原先生、長い間お疲れ様でございました。天に召された日野原先生の平安をお祈りいたします。
日野原先生が選択したのは病院やホームではなく、ご自宅での最期。
経管栄養が必要となった時、延命治療を拒否され、安らかで自然な最期であったそうです。
多くの方を看取り、命の尊さ終わりの大切さを誰よりも知っている医師の選択。
最期の時、中心は医療ではなく自分自身。死は敗北ではなく新たな生の始まり。
私はお見事な人生とその終焉に、思わず心からの拍手を贈りました。
私が日野原重明先生を知ったのは、1990年日本経済新聞掲載の「私の履歴書」。
当時私は大学病院にて白衣を纏い臨床ナースとして働いていました。
患者さんに寄り添い働ける喜びと共に、ベットサイドで人の病や死に懸命に向き合いながら、疑問や葛藤も数多く感じていました。死とは敗北なの?
そんな時、日野原先生のメッセージや生き様から、人の生命の巡りのついて学び、幾度となく勇気をいただき助けられてきました。
日野原先生は「生き方上手」が大ベストセラーになり、その他数多くご出版されましたね。
先生が監修された本に「ナイチンゲールに学ぶ家族ケアのこころえ~やさしい看護と介護のために~(素朴社)」があります。私がこの本を手に取ったのは2007年。
看護学生時代、入学してすぐに基礎の看護学として学んだフローレンス・ナイチンゲールによって書かれた「看護覚え書」(1860年出版)。
この本からエッセンスを抽出し、日野原先生の解説とともに10歳から読めるようにわかりやすく紹介されています。
「あの難しい看護学が、一般の方向けにこんなにやさしくわかりやすくなるなんてびっくり!なんてあたたかい本!」と驚きました。
必要なものはきれいな空気、
太陽の光
清潔な部屋
静けさと音
食事
会話
観察
回復
そして、大切にしたい自然の力
本では家族や病人をケアするためのケアの心得を具体的に述べています。
看護師や介護士など專門職に限らず、私たちは誰もが家族や友人の病気からの回復を応援したり、病気にならないよう気を配ったりします。
日野原先生は、そのために大切なことを、多くの方々にやさしくわかりやすく伝えました。
画家、詩人の葉祥明さんの優しい色彩のイラストが添えられて、まるで詩集のようです。
私は本好きですが、以来、私の中のベストセラーの1冊に加わっています。
多くの方がケアに関わる時代、実務的なノウハウや知識の前に、「看護覚書」の頁をめくってほしいな~と思います。
日野原先生のメッセージは医療のみならず、音楽や文学を通じても私たちの心にこれからも残り続けることでしょう。
先生の講演(椅子も机も資料もなし)を聴きにいった際に、新老人のスローガンとして伝えていたことは
1. 愛すること To love.
2. 創(はじ)めること To commence.
3. 耐えること To endure
でした。
生老病死は誰もが体験することですね。
私の尊敬するパブロ・カザルスも日野原先生も、マザーテレサも、ガンジーも、皆平和を唱え続け、人間が病気や争い、貧困や死などの苦しみや悲しみに出逢った時に、絶望から救いあげてくれる存在であったと思います。
そんな力を持ち生き抜いた人に憧れながら、私もコツコツと重ねていきたいと思います。
命の大切さ、平和の尊さを唱え続け、医師である前に豊かな人間であった日野原先生、ありがとうございました。